【完】時を超えて、君に会いに行く。
放課後になって、私は沙奈と一緒に美術室に向かった。
「ほら、これが完成した絵」
飾ってあるキャンバスを指差して、沙奈は誇らしげに言う。
私はその絵を見て、再び心臓がチクリと痛んだ。
すごくキレイな絵だ。
航も沙奈も私も、とても幸せそうに笑ってる。
だけど違う。
何かが足りない。
大切な何かが欠けている。
それがいったいなんなのか、全く思い出せないくせに、魂が私に訴えかけてくる。
……忘れたくない。
……思い出して。
心がそうやって必死に叫んでいるのに、どうして私は何も思い出せないんだろう。
また、涙が溢れそうになる。
私はそっと、目の前の3人の絵に手を伸ばした。
まるでこの絵は、誰かが見ている風景のように思えた。
誰かの瞳には、私たち3人がこうやって幸せそうに映ってたのだろうか?
それすらもわからない。
ただ、なんとなくそんな気がするだけだ。