【完】時を超えて、君に会いに行く。




「あれ?」



ぼんやりと絵を眺めていると、背後で沙奈が不思議そうな声を上げた。


何かと思い振り返ると、沙奈は机の上に置いていたもう一つの絵を見ているようだった。



「どうしたの?」



「ねぇ、見て。これ……」



そう言って、驚いたようにその絵を私に見えるように掲げる。



それは、先日、沙奈が描いた私が小説を書いている絵だった。


だけど沙奈が指さしたのは、紙の端の白い部分。


私は3人の絵が飾ってあるキャンバスから離れ、沙奈の元へと近づいて、その絵を……沙奈が指さす部分をじっくりと見つめた。



……え?


なに……これ……?




〝僕の見ている風景〟




ひっそりと誰にも気づかれな空白の場所に、鉛筆でそう紡がれていた。


画家が題名をメモするように、下書きみたいな感じの書き方で。


この絵は沙奈が描いたもの。だけどこの字は、沙奈のものではない。



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