【完】時を超えて、君に会いに行く。



「いったい誰が書いたんだろう……?」



絵を描いた沙奈自身も、知らない様子だ。




「イタズラかな? 勝手に書かれたのかも。鉛筆でよかったね」



思ってもないことを、言ってみた。



私はこの題名が、イタズラで書かれたとは思えないのだ。


もし沙奈か私に悪意があって書いたものなら、消しゴムで消せる鉛筆で書く必要もない。



これを書いた人は、意図的に鉛筆で書いたように思える。


そこに深い意味はなくて、ただ単純に、この絵の題名を自分が思うがままに書いたんじゃないかって……。



「うーん……。でも、これはこのままでいいのかもしれない」



沙奈はその題名を見つめながら、ポツリとつぶやいた。



「え、いいの?」



「うん。なんていうか、これ書いた人の気持ちがひしひしと伝わってくるの。寂しそうっていうか……切ないというか……。
変だよね。誰かわからない人に情が湧くなんて……」



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