【完】時を超えて、君に会いに行く。
そう言った沙奈の顔が、切なそうだった。
まるで叶わぬ恋と知りながら、想い人を見つめるような……。
……ねぇ、沙奈。
私達は、何か大切なことを忘れていない?
今日見た景色の中に、何か足りないと感じなかった?
でも……それが何かはわからないんだ。
沙奈も私も……たぶん、誰にも。
結局沙奈は、自分の意思で題名をそのままにしておくことに決めた。
「じゃあ、私はバイトあるから帰るけど……未歩はどうする?」
「私はしばらくここに残るね。まだしたいこともあるし」
「そっか。わかった」
そして沙奈とはそこで別れて、私は再び目の前の絵を見つめていた。
ずっと……。
ずっと、ずっと見つめていても……飽きることはなくて。
ただ、この絵に……この題名に、私が失くしてしまった記憶の断片と繋がりがあるのではないかとどこかで期待しながら、時が過ぎていった。