【完】時を超えて、君に会いに行く。
「……あっ……!」
それを取り出したとき、私は声を上げた。
原稿用紙だ。
それも、見覚えのある色褪せた原稿用紙。
その瞬間、私の記憶の中に今までずっと思い出せずにいた〝あの人〟との思い出が洪水のように流れ込んできた。
「……彼方……」
私が忘れていたのは、彼方だ。
彼方との出会い。
彼方の優しさ。
彼方の嘘。
彼方の悲しい過去。
彼方の陸上で走る姿。
彼方の寂しそうな顔。
彼方の不器用な笑顔。
彼方を事故で失いかけた後悔も、彼方が生きていてくれた奇跡のような喜びも……。
すべて、すべて思い出した。
そして、彼方が私の記憶を消す直前に言ったあの言葉も……。