【完】時を超えて、君に会いに行く。




――『好きだよ、未歩』



あのたった一言に、どれだけ想いが詰め込まれていたのだろう?



ありがとうも、ごめんねも、さよならって意味も、すべてその一言に託していたような気がするのだ。



だって、意識を失う前に見えた最後の景色は……。



私が見ている風景は……。



彼方、あなたの泣きそうな顔だったもの。





……ダメだよ彼方。


行っちゃやだ。


その言葉をなかったことにするなんて、彼方の都合がよすぎるよ。



だって私は、何ひとつ彼方に伝えられていないのに。



さよならも、ありがとうも、ごめんなさいも……。



そして、好きって気持ちも。




「このままじゃ、ダメだ……!!」




私は色褪せた原稿用紙を持ったまま、美術室を飛び出した。



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