【完】時を超えて、君に会いに行く。



廊下を走り抜け、階段を駆け上がる。



日頃、運動していないせいか、すぐに息が切れ始めた。



こんなとき、幼なじみの航なら、自慢の足でもっと速く走って、すぐに彼方に追いつくことができるんだろうな……なんて、ふとそんなことを思った。



……でも、私だって。



ドジですぐ泣く可愛げのない私にだって、好きな人のためなら……やってみせるよ。



今ある力を、出し惜しみするつもりなんてない。



「彼方っ!」



教室に入っても、誰もいなかった。



「彼方……! 彼方っ!」



廊下をすれ違う人たちが、叫ぶ私のことを振り返りながら見ている。



それでも必死にこの声で叫び続けた。



もしかしたら、彼方は気まぐれに「未歩」なんて呼んで、飄々と現れてくれるかもしれない。



そんな淡い期待を胸に、名前を呼び続けた。




たとえこの声が枯れそうになっても、何度でも。



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