【完】時を超えて、君に会いに行く。
今、私が小説を書き続けることができるのは、彼方のおかげだ。
彼方が私の物語を、私自身を救ってくれたから。
ならば私は、彼方の優しさを無駄にしてはいけない。
書き続けなきゃ。
新しく紡ぎ始めた私だけの物語を。
そうと決まれば、早かった。
古い原稿用紙は机の隅に置き、すぐに机の中にある新しい原稿用紙を取り出して続きの言葉を探して書く。
場面はクライマックスだった。完結まであと少し。
物語の主人公……少年は、少女のおかげで再び前を向けた。
「君がいたから、僕は未来とまた出会えたんだ」
少年にそう言ってもらえた少女は、あまりに嬉しくて微笑む。
「だから、この手で夢を掴むその時は、僕の隣にいて笑っててほしい」
だけど少女は、そこで突如、涙を流し始めた。
少年は戸惑う。そんな彼を、堪らず抱きしめた。