【完】時を超えて、君に会いに行く。


彼方は私の肩を抱き、そっと身体を離す。


「ありがとう、未歩。未歩と出会えて、本当に良かった」


そして、驚くほどおだやかに、清々しい声でそう言った。

何一つ迷いのない、真っ直ぐな瞳で。



本当はもう、わかってた。


彼方が未来へ帰ると決めていたことも。


そして、どれだけ言ってもその決意は揺らがないということも。


だって私は今を生きる人間で、彼方は未来を生きる人。


こんなに近くにいても、遥か遠い未来に存在する。



私がタイムリープの話を打ち明けたとき、彼方が疑いもせず受け入れてくれた理由も。


私が小説を書けなくなってから、美術室を悲しそうに見つめていた理由も。


病院にお見舞いにいくたび、少し困ったような顔をして私を遠ざけようとしていた理由も。



全部、私のためだった。


私の物語のためだった。

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