【完】時を超えて、君に会いに行く。



ズルいよ。



自分は一方的に気持ちをぶつけるくせに、私には言わせてくれないなんて……。


絶対に、私の気持ちに気づいてるはずなのに。



私はふてくされた。



「……私のこと好きなら、記憶を消さないで」



最後にワガママを言った。勇気を出して告白しようとしたのに、それを遮られた意地が邪魔をして、可愛くない言い方しかできない。



彼方が困った表情を見せる。


私が彼方のお見舞に行って病室に長居しようとしたときに見せるあの顔と、よく似ていた。



「それは、無理だよ」


「なんで?」


「だってもう、未歩には必要のないものだから」




必要のないものって、何が?



その原稿用紙が?

彼方が?



やめてよ。ふざけないで。



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