【完】時を超えて、君に会いに行く。



彼方の壁のある言葉に、また目頭が熱くなった。


ズキズキと胸が痛む。


……泣きたくないのに。



下唇を強く噛んでうつむき、泣くのをこらえる。


その間に彼方が私の目の前まで来たということが、気配でわかった。




「未歩……泣くなよ」



今度は彼方からだった。



音もなく、容易に私をその腕の中へ閉じ込める。


少し冷たいと感じた風が、優しいぬくもりへと変わっていく。



だけどそれも、束の間のこと。



少しずつ、今感じてるぬくもりも、確かな重みもなくなっていく。


儚い存在。



「……彼方のこと、忘れたくない……っ」



震える声で呟く。


ようやく素直になれたのに。



彼方の全身が、少しずつ金色の輝きに包まれていく。


まるでそれは、夕日が作り出したモヤのように。


光の粒がこぼれおちて、キラキラと散った。



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