【完】時を超えて、君に会いに行く。




「大丈夫。俺が覚えているから」




……ドキッ。



どこかで聞き覚えのある、その言葉。



いや、違う。



見覚えのある言葉だ。



『私が覚えているからね』



私の物語の中の少女の言葉と、彼方の言葉がリンクする。




思わず顔を上げる。



視界の中には、彼方がいつもよく見せるあの困ったような笑みを浮かべ、慈愛をたたえた瞳で私を見つめた。



「未歩がたとえ、俺を忘れても……」



彼方の切なげな声が、どこか遠くに聞こえる。



「一緒に過ごしてきた時間が消えるなんてこと、絶対にない。俺はそう信じてる」



優しくて、おだやかな声。


まるで私を、慈しむような。




見れば、いつの間に取っていたんだろう。色褪せた原稿用紙を手にしていた。




きっとこの人は、私の未来を塞ぐものをすべて持って行くつもりなんだ……。



そんな気がした。



< 373 / 420 >

この作品をシェア

pagetop