【完】時を超えて、君に会いに行く。
「大丈夫。俺が覚えているから」
……ドキッ。
どこかで聞き覚えのある、その言葉。
いや、違う。
見覚えのある言葉だ。
『私が覚えているからね』
私の物語の中の少女の言葉と、彼方の言葉がリンクする。
思わず顔を上げる。
視界の中には、彼方がいつもよく見せるあの困ったような笑みを浮かべ、慈愛をたたえた瞳で私を見つめた。
「未歩がたとえ、俺を忘れても……」
彼方の切なげな声が、どこか遠くに聞こえる。
「一緒に過ごしてきた時間が消えるなんてこと、絶対にない。俺はそう信じてる」
優しくて、おだやかな声。
まるで私を、慈しむような。
見れば、いつの間に取っていたんだろう。色褪せた原稿用紙を手にしていた。
きっとこの人は、私の未来を塞ぐものをすべて持って行くつもりなんだ……。
そんな気がした。