【完】時を超えて、君に会いに行く。
それを聞いた私は、最初は驚いた。
だってあの航が……。
自分の足で走ることが大好きな航が、人に教えるために走りたいなんて……考えてもみなかった。
大きくなっなぁ。
なんて、そんなことを思いながら、もう随分と先にいる航の後ろ姿を見つめる。
いつの間に、こんなにも距離ができてしまったんだろう。
私の夢は……。
「未歩!」
航に名前を呼ばれ、ハッとして顔をあげる。
ずいぶんと先にいる航は、立ち止まってこちらに振り返っていた。
その間に、私は必死に航との距離を縮める。
ようやく追いついて、切れている息を整える。
「どうしたの?」
「見ろよ!」
宝物でも見つけたかのように、航はキラキラとした瞳を宙に向け、上を指さした。
その先を視線で追うと……。
「あっ」
「すげー。もう咲いてるんだな」
早咲きの桜が、小さく、強く、揺れていた。