【完】時を超えて、君に会いに行く。
そんな様子をぼんやりと眺めながら、私はまだどこか夢見心地な気分でいた。
だってまさか……自分の物語を本として形に残せるなんて……思いもしなかった。
私は瞼を閉じて、つい先日の出来事を思い出す。
私がやっとの思いで完成させた原稿を、航は勝手に読んで、いつのまにかネットで調べた小説大賞に応募をしてしまっていた。
それを知った私は、ふざけるな!なんて航に怒鳴ったけれど……それがなんと。私の作品が当選して大賞に選んでもらえたんだ。
当選の電話がかかってきたときは、驚いたなんてもんじゃなかった。
全身が震えて、声も震えて……心臓がバクバクと騒がしくって、本気で死ぬかと思った。
出版社の方は優しくて、緊張でうまく話せない私を安心させるように話しかけてくれて……。いろんな話も聞かせてくれたし、とても充実した時間になった。
真っ先に大好きな幼なじみと親友に伝えたら、2人とも自分のことのように喜んでくれた。
そして、これを機に家族にも小説を書いていることを打ち明けた。
家族もまた、2人と同じように心から喜んでくれた。