【完】時を超えて、君に会いに行く。




卒業生にしてはずいぶんと早く、母親とふたりで校舎を後にした。



暖かな陽だまりに中、とてもおだやかな春の風が、息吹を吹き込むよう流れ込んできた。




まだ満開とは言えない桜の花びらが、まるで光の粒のように、キラキラと日の光に照らされながら舞い上がる。



それは風に乗って一面に広がりと、蒸発するかのように儚く散っていく。



なぜだかそれが、無性に悲しかった。




……私、どこかで似たような景色を見た気がする。




思わず立ち止まり、校舎を振り返った。



どうしてこんなにも、後ろ髪を引かれる思いになるのだろう?



心残りがある子供みたいに、私はその場から動けなくなった。



< 388 / 420 >

この作品をシェア

pagetop