【完】時を超えて、君に会いに行く。
「未歩、どうしたの?」
お母さんは、立ち止まる私を不思議そうに首を傾げて待っている。
……行かなきゃ。
これから、私は夢を叶えるために……行かなきゃいけない。
だけど、何か……。
大切な何かを忘れてない?
私は誰かに、夢を叶えたよって伝えていないような気がする。それも、とても大切な人に。
本当は、伝えたかったはずなのに。
――『未歩に会いに行く』
そう言ってくれた人は……誰だったんだろう。
思いだせない。
するとその時だった。
「わっ」
追い風にも似た突風が吹いてきて、桜の木が音を立てて揺れると共に、私はトンッと背中を押された気がした。
思わず一歩、前へと踏み出す。
顔を上げれば、すでに風は止んでいた。
そのとき、ヒラヒラと散る桜の花びらが、私の目の前に舞い降りてくる。