【完】時を超えて、君に会いに行く。



「彼方は、沙奈のこと好きなの?」



思わず聞いてしまった。



「……は?」



彼方はさっきよりも驚いていたように……いや、驚きを越えて、面食らったようにこちらを振り返った。



あれ? 違ったかな?



目の前にいる人物は、呆然として目をしばたたかせている。



「え、なんでそうなるの?」



違ったようだ。



「いや……だって彼方、さっき昇降口で用事なくなったって言ってたじゃん?
それで美術室の方さみしそうに見てたから、沙奈のこと待ってたのかなって……」



でもその沙奈は、航と一緒に帰ってしまった。



だからあんな切なそうな顔をしてたのにって、思ったんだけど……。



そう、例えるなら……。


ずっと何かを待ってるような……そんな顔だった。


恋い焦がれている、待ち人みたいな。

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