ORANGE SNOW
初めて見る町は薄暗く、私がメイドから拝借した質素なドレスでも目立つくらいに歩く人々の格好はみすぼらしかった。
貴族が住む地域は割りと清潔感溢れるそれこそ金作りの建物などがあるが、一般人の地域はこんなにも薄暗く、みすぼらしく、こんなに格差があるものなのか、と私は呟いた。
ふと空を見上げると、チラチラと白い物が私の顔にかかってきて、私の熱でそれは水となり頬を伝って落ちていく。
それが雪だとわかるのは時間もかからず、いつも室内から雪を見ているだけの私はあまりの感動に思わず微笑んだ。
だがすぐに口の緩みをきゅっと結び、これからの事を考える。
飛び出したはいいが、ドレスも宝石もお金も全てを捨てたのだ、何も手元にない。
働くにしても私は帝王学と剣術以外何もやった事がない。
私はあくまで箱入り娘なのだ。
急に世界にでて、適応できる訳がないと私はこの時初めて知り、一気に絶望した。
最初はチラチラと降っていただけの雪は段々と大降りとなっていく。
夢だけを見て飛び出した私をまるで嘲笑っているかのようで、私は思わず泣きそうになった。
―――帰ろう。
私の居場所はあそこで、私は両親の言いなりになるしかない人形なのだ。
何も変わらない、何をしても変えられない。
私は、理解してしまったのだ。