ORANGE SNOW
「あらあら」
さくらはため息をつくときらに近寄り、そっと頭を撫でた。
きらは一瞬びくっとしたらすぐにさくらの顔を見上げて、ぎゅっとさくらの首に抱きついた。
依頼先の公爵に虐待を受けていたというきらは、全身にあった痣は既に薄らいで消えかけていた。
その伸ばしっぱなしで放置されていた髪もセルリアによりばっさり、もとい、おかっぱにされすっきりしている。
服も貴族がきるようなドレスではなく、小柄なきらに合う蓮華のお下がりを着ていてすでにこの家になじんでいた。
セルリアがきらを連れてきた時リヴィアスは驚いていたが、いつものように怒鳴らずにきらを優しく撫でて迎えいれたのは驚いた。
いつもなら怒るのにどういう吹き回し?というと、別に、と優しい笑みを浮かべていたのを覚えている。
「蓮華、きら頼んだよ」
「きらあそぼー!」
さくらがそう言いきらを離すと、蓮華はお盆をおいてきらに近寄り手を握った。
するときらはすぐに笑みを零し、うん、と頷いてみせた。
リヴィアスとセルリアに近づくとあちこち焼け焦げや斬り刻んだようなあとがあり部屋が荒れていて、さすがにやりすぎだろう、とさくらは二人に声をかける。
「ちょっと、今何時だと思ってんの。
7時よ7時。
近所迷惑だし、煩いし、部屋荒れてるし、そろそろ終わってよ」
「だってこいつこうでもしないとまたするじゃねーか!」
「もう失敗しないって言ってんでしょ!!
ね、さくら!
さくら愛してるからあたしの味方を!」
「しないしない言って失敗してきたのが今日のやつだろ!」
再び騒ぎ出した二人にさくらはため息をつくと、手を額にあてる。
二人はそれに気づかないのか、目に入らないのか、簡易魔法をお互いにぶつけながら取っ組み合いをしている。
その間に、さくらの周りの空気が変わる。
「天より現われし恵み、浄化となり降り注がん!」
「ちょ、お姉ちゃん魔法!?」
蓮華が叫ぶがさくらは既に「詠唱」し終わり、二人に狙いを定めた。
「スプラッシュ!」