ORANGE SNOW
『ねえ』
と、不意に後ろから声をかけられた私は急いで涙を拭い振り向いた。
幼い少年の声だったので私は小さな少年を思い浮かべていたのに、意外にもそこにいたのは白いマントをすっぽり被った老人だった。
私は思わず首をかしげ、なあに、と老人に問おうとした時、
『炎 の 従 者 さ ん 』
老人は見た目と裏腹のあの少年の声で、凍りつくような空気をかもだして私にそう言ったのだ。
私はぞくっと背筋が凍り、身を引かせた。
炎の従者。
それは私があの使用人から言われた言葉であり、私しか知らないはず。
かと言って、使用人の容姿とは全く違うこの老人に、私は不安で一杯になった。
その不安に耐え切らず、老人に背を向けて屋敷に向かって走り出した。
私は雪に足を捕らわれながら必死に走った。
あまりに焦った様子の私に周りの人は不思議そうに私を見ているが、私はそんな視線も振り払おうと全力で走り続けた。
―――怖い。
そう、私はあの少年の声をした老人が、なぜだか酷く怖かったのだ。
白い、雪に溶けるようなあの姿。
そして私の魔法を嘲笑うかのように言った、言葉。
私は全てが怖かったのだ。