ORANGE SNOW
「ッ!」
蓮華が叫んだ途端、あたりにキーンッとした不愉快な音が耳が割れそうなくらいの音量で広がる。
その音に耐えきれず、建物や地面の脆い部分にヒビが入った。
白い少女がその音に思わず怯み、頭に手をやるのを確認すると同時、蓮華は思いっきり走り出す。
ただただ、夢中に自分の姉の元へ行きたいと走り出した。
本来魔法は自然物に存在する、水や風、炎などの精霊に「詠唱」で語りかけ、力を借りる代わりに魔力を渡す事で初めて成立する。
だが蓮華の場合、その「詠唱」から魔力を渡す過程が必要なく、そして魔法として存在しない筈の「音」を扱う事ができた。
珍しい目で見られる事も多々あり、生まれもって扱う事が出来たその魔法を、姉であるさくらにあまり使うな、と禁じられた。
故に、蓮華自身も使ったのはひどく久しぶりだった。
始め「悪魔の子」と呼ばれた時、この魔法の事か、と思った。
珍しいが故恐れる人がいたのも間違いではなく、そういった理由で禁じられたのもあるからだ。
そうだとしたらずっと使ってなかったのに、なぜこの少女はこの魔法を知っているのだろうか。