不器用恋愛
いつも向かうバー。
マスター加地さんの緩い空気と、独特の店の雰囲気が気に入っている。
「今日は一人ですか?」
テルが若々しい視線を向ける。妙に好意的だ。いっとくが俺にそっちの趣味はないぞ。
「ああ」
カウンターに座って煙草を取り出す。
「いつ見ても絵になりますねー」
テルが溜め息混じり呟いた。もう一度、言っておくが俺にそっちの趣味は…「蒼ちゃんも、煙草が似合うよね」
加地さんの軽やかな低い声、その名に思考が引き戻される。
「心外ですけどね」
テルは不本意そうに頷いた。言葉の使い方おかしくないか?