不器用恋愛


「ハァ…」

今日何度目かの溜め息をつく。
疲れや後悔が混じる物でないそれは、感嘆の様な溜め息。



マスターはクスリと笑って、「テル?仕事中だからね」柔和な声を落とす。


もう、close出してんじゃないっすか、と思いながらも、頭は今夜起こった出来事に戻される。


「…マスターの言う通りでしたね」


このバーの馴染みである蒼さんと啓吾さんは端から見ても焦れったいくらい関係を持て余していたけど。


啓吾さんは、俺の目から見てもハイレベルな男前で、容姿だけでなくその雰囲気さえ憧れていた。

一方の蒼さんは、突き放した態度に冷たい目線の中性的な美人。柔らかい女性が好きな俺の好みではない。


長身の二人は確かに絵になるけれど、何というか、タイプが違う、と常々感じていた。


啓吾さんの蒼さんへの感情は本人が鈍いだけで、端から見ればはっきりと分かるから、口には出さなかったけど


啓吾さんにはもっと女性らしい人の方が似合うだろうし、蒼さんは年上の落ち着いた男性の方が似合うと思う。

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