不器用恋愛


「テル、これ片付けといて」

マスターがコツンとグラスを鳴らす。


――蒼さんには、マスターの方が似合うよな


その思考は以前から感じていた。カウンター越しに話す二人は大人の魅力があって、蒼さんの刺々しい雰囲気をマスターが中和する。啓吾さんとは反発しあうのに。





「マスター、蒼さんに惚れてましたか?」




ひょっとしたら無神経であるかもしれない自分の言葉に既に後悔が過ぎったけれど、どうしても声にしていた。


元々、『背中を押してあげなくてもあの二人はうまくいくんじゃない?』なんて飄々としていたのはマスター。啓吾さんの性格を読んで『今呼び出して』と俺に目配せしたのも。

案外この人は策士なんじゃないかと思う。



だけど


マスターが蒼さんの事を純粋に誉めるし、今夜の口説き方は二人を挑発するものであったとしても、真意が計り知れない。



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