不器用恋愛


酔ったのか、なんなのか。普段と違う空気に調子、狂う。

啓吾と恋愛とか女と男の話をする事なんて殆どないから。

仕事の話か、馬鹿みたいな趣味の話。男と女の関係でもない。ただの友人関係。


「おまえって冷めてる」

啓吾は、力強い瞳でからかうようにあたしを見つめる。


「熱くさせてみたいでしょ?」


あたしもそれを受け流す。


「別に?」


啓吾の淡い茶色の瞳が悪戯に光って、


「俺が熱くなったら嫌だし」


さらりと、そんな事言うから。


本当にこいつは嘘つき。食えないヤロー。

内心、その瞳に、胸の奥の方が、嫌な締め付けを起こしかけてるなんて悟られたくなくて、居心地悪い感覚に煙草を吸い込んだ。



ほんとやだ。調子、狂う。

< 5 / 41 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop