冬空どろっぷす
日向と一緒に帰ってきたことは確かなのだけれど。
どの道をどう通ってきたとか、どんな話をしていたとか。
何も頭に残っていなかった。
自分の部屋のドアを開けて、制服のままベッドに倒れこみ。
安心する家の匂いを胸いっぱいに吸ってから、やっと帰ってきていたんだと、意識が戻ってきた。
「…ふぁ。」
自分の気持ちが、ぐちゃぐちゃだった。
私は、こんな面倒くさい”女の子”じゃないつもりだったのに。
―ううん、違う。
こんな面倒な女の子じゃないようにしてきた。
本当の自分が、どんな子なのかなんて。
自分が一番よく分かってる。
泣き虫。
甘えん坊。
嫉妬深くて。
天邪鬼。
意地っ張り。
あぁ、いいところなんて一つも浮かばない。
どうしたって、いい子になれない。
けれど、そんな自分が嫌な子だって気付いたころには、もうどうしようもないくらいに。
”私”は”私”でしかなくて。
”私”以外にはなれなくなっていた。
だから、自分が嫌な子だってばれないように。
クールで。
友達思いで。
優しくて。
格好良くて。
笑顔の似合う。
そんな子になれるように。
必死に猫を被って、そうしてきた。
好きな人を潔く諦めることも。
友達と好きな人を祝福することも。
自分を振った男にクールに別れを切り出すことも。
どこまでも完璧に、格好よく。
そんな風に、振る舞ってきた、つもり。
実際には心の中は嵐のように荒れ果てて、立ち直れないくらいの衝動が心を壊していたけれど。
「風邪を引いたんだ。」
って。
「少し具合が悪かったんだ。」
って。
言い訳をして、部屋に引きこもって。
どうにか心をつぎはぎにして。
なのに、どうしてだろう。
”あの人”の前では、うまくいかない。