冬空どろっぷす

ごろごろと、ベッドの上で転がる。
大好きな猫のキャラクターのぬいぐるみを抱きしめ、こうしてもふもふするのが日課の一つだ。

―ぴんろん♪

唐突に鳴り響いた音に、のそのそと顔をぬいぐるみから離す。

充電器にささったままの携帯を拾い上げ、目を細めながら着信を確認する。

「…日向?」

珍しいこともあるものだ。
日向はあまり携帯をいじっている方ではない。
むしろ携帯を鞄にしまいっぱなしのことの方が多いように思う。

メッセージを見てみれば、

『明日、暇?』

という簡潔なものだった。
何が言いたいのかよく分からない本当に簡潔な文。

『暇だけど、どうしたの?』

『お願いがある』

『珍しいね(笑) いいよ、何?』

『明日、一緒に映画。』

『見たいのがあるの?(・ω・)』

『うん。だから、明日。』

『分かった!どこに何時?(´ω`*)』

という短い文章のやりとりを繰り返し、時間と場所を決める。
そうして携帯を放り出し、初めて気付く。

―そういえば、二人で学校以外に出掛けるのは、初めてだな。

大抵はみんな一緒。
学校以外に遊びに行くときはそうだ。
だが予定が合わなかったりで学校から帰るときとかに二人になることはあったし、あまり緊張はしない。

それに、日向だから、というのもある。

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