足音
はじまり
これは、実際俺が2年前に体験した話で、ようやく客観的に見つめ直せるようになったからまとめて書いてみようと思う。

俺は市内にある小さな大学への入学を前に、1人暮らしをはじめたばかりだった。大学からちょっと離れた場所にアパートを選んだのは、不便ではあるが田舎のような雰囲気が俺にあっていると感じたからである。

家族からは大変心配され、大好きなおばあちゃんからはお菓子やらお守りやらをいろいろ持たされた。

大学が始まる2週間前から引越しをしたのは、テスト的な意味でもあったのだが、これが存外寂しいもので時間を潰すことにも持て余すものがあった。

住み始めてから3日くらい経った頃だろうか?ずっと家にいるのも身体に悪いだろうと、前日に購入した自転車に乗って家の周りを散策してみることにした。

俺の住んでいる場所は、イメージとしては谷間というか山間部なのだが、その上の段に街があるらしくそこへ行ってみようと思っていた。

しばらく自転車を漕いでいくと上り坂になったが、気にせず進んでいくと徐々に道が険しくなってきた。

もしやさっき道を間違えたのか、とも思ったのだが、引き返すには随分来てしまった。

どうしようかと思いながらも進んでいくと、開けた場所に出た。

そこは多くが草原で、手入れがされていないのか、草は伸び放題であった。
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