足音
俺が漕ぐのをやめようとした瞬間だった。

「早くこっちにきなさい!」

お坊さんであった。

俺は自転車からうまく飛び降り、どこにそんな力が残っていたのかというほど、死力を尽くして走り続けた。

俺は、ただ助かりたい一心で階段を登るお坊さんに着いていった。


ばん。ばん。ばん。

幾重もの扉を閉めると、どんどんと奥の部屋に入っていった。

やがて、足音は小さくなり俺は声を抑えず泣いた。

お坊さんは何も言わずにただ泣き止むのを待ってくれた。

「見たのか。」

俺はコクリとうなずいた。

差し出されたコップで水をもらうと、感謝の言葉を告げ、さらに続けた。

「あれは一体」

ミシッ
「ひいっ」

「これはまずい。私は外へでるが、私が戻るまであなたはここから決して出てはいけない。どれだけ時間がかかるかわからないが耐えて欲しい」

そういうと、お坊さんは中央にある、金属製の大扉から外へ出て行ってしまった。

すると、バチバチっと音がして室内灯が全部消え去った。

トントン

トントン

外から大扉を叩く音がする

トントン

トントン

気が狂うかと思った。
止むことなくその音は続く。

トントン

トントン

俺はガタガタ震えながら、中央の柱にすがりついていた。

だが、予想外にも音はすぐに止んだ。

少し経って、俺の恐怖は少しずつ薄らいできた。

「もう大丈夫だ。出ていいぞ」

俺は聞いた声に安心した。お坊さんの声だった。

「一体これはなんなんですか?」

俺は聞きながら扉に手をかけた

「ッ!!」

急激に右足の太ももに痛みを感じた。

なんなんだと太ももに触ると、ポケットに違和感があった。
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