恋愛しない結婚
日付が変わったばかりの平日の夜っていうのは、独身女が一人で出歩くには不向きだ。

それでも今日は、仕事のあとまっすぐ家に帰る気にもなれなくて、結局いつものカウンターで酔ってしまう。

酔うだけならいいのに、と自分でも思いながら何度も同じ愚痴を繰り返し、それでもすっきりしない気持ちに折り合いが付けられずにいる。

「でね、仕事を教える為に隣りに座ってプログラムの内容を教えて、なかなか見込みのある子だからこっちも本腰いれてたのに。まあ、確かにかなり接近して教えてたけどさ。
『砂川さんって年下にも狙いを拡げたんですね〜』
って一人前に仕事もできない若いだけの女の子達に言われてさー。
私は単に、後輩に仕事を一生懸命教えてるだけなのに、どうしてそれを、年下で男前な新入社員を誘惑してるって見られなきゃなんないのよっ」

グラスに残っていた水割りを一気に飲み干して、目の前で苦笑している弟の輝に差し出す。

すると、輝はうんざりとした表情を隠すこともなく、大きくため息を吐いた。


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