恋愛しない結婚
「もうやめとけば?こないだみたいに飲み過ぎて意識無くしたって、今日は送らないからな」
「……うるさい。まだまだ大丈夫だもん。なんならストレートでもいけるから、早くおかわり作ってよ」
「……酔っ払いは嫌われるぞ」
呆れた声で私のグラスを取り上げながらも、「これで最後な」と新しく作ってくれたグラスを私の手元に置いてくれた。
私はそれを一口飲んだ瞬間軽くむせると、きっと輝を睨みつけた。
「何これ、薄すぎる……。けちってるんじゃないの?」
酔いのせいか、ほどよく力の抜けた視線と声で輝を責めても、輝はただ肩をすくめるだけで気にする様子もない。
「いい加減、俺の店以外にも気分転換できる場所を探せよ」
「……そんなこと言ったって」
そう突き放さなくてもいいじゃない。
私は小さく呟いて、薄い水割りを再び口にした。
かなり薄いそれは、喉になんの刺激も感じなくて物足りない。
今日この店に来てからかなりの量を飲んでいることを考えれば、輝の態度もこのお酒の薄さも理解できるけれど、今素面に戻ると、泣いてしまうんじゃないかと不安になる。
せめて家に帰るまでは、お酒の力で気持ちをあげておきたいんだけど。
そんな私の気持ちに気づいているのかいないのか、相変わらず呆れた表情で私を見ている輝。
弟のくせに……生意気だ。