恋愛しない結婚


カウンターに頬杖をついて、ぼんやりとグラスの氷が溶けるのを見ていると。

「……じゃ、俺と結婚しないか?」

あ……誰かが誰かにプロポーズしてる。

甘く低い声。

そんな声でプロポーズされたら、私なら一発で頷くのに。

「はい、了解です……なんてね」

いいなぁ。

いつか私もあんな優しい声でプロポーズされたいなあ。

その前に恋人探さなきゃいけないけど。

まあ、しばらくは無理かなあ、なんて考えながら、一人苦笑していると。

「おい、夢。隣」

頭上から焦ったような輝の声が聞こえた。

は?隣?

輝の言葉の意味がわからないまま顔を上げ、そして輝が視線で示す先を見ると。

二つ隣の席で飲んでる男性が、私をじっと見つめていた。

「……?」

確かに私を見つめているけれど。

どうしてなのか、訳がわからないのは私が酔ってるから?

こんな男前に見覚えがないのも私が酔ってるから?

「あの……?」

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