恋愛しない結婚



「……ターゲットにしたい人には相手にされてませんけどね」

「は……?」

「いえ、いいんです。……じゃあ、コピーとってきます。10時からの打ち合わせまでには体調を復活させておいて下さいよ」

「あ……わかった」

拗ねて不機嫌そうな葉山くんの背中。

いつも穏やかで自分の感情を露わにすることなんてないのに。

やっぱり女の子達から結婚相手のターゲットにされてるってのがストレスになってるのかな。

ターゲットになんてされることもなく、たった一人の相手でさえいない私にしてみたら、羨ましい限りだけど。

それでもやっぱり苦労してるのかも。

『相手にされない』なんて言ってたし、もしかしたら好きな人がいるのかもしれないなあ。

でもきっと、葉山くんのような超優良物件なら、相手が誰であれ確実に手に入れられるような気もするけど。

あの機嫌の悪さを見るかぎり、うまくいってないのかな。

少しの同情を覚えながら、私は体を伸ばして、鎮痛薬が早く効きますようにと思いながら打ち合わせの資料に再び目を通した。


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