妖精と彼







姉さんならば、トウくんの何倍ももっともっともっと、素敵な人が彼氏にできるだろうに……


姉さんはなんでこんな人に惹かれかけてるんだろう…。






まさか、こんな幼稚な人が好みだったんだろうか……?






そんな事を考えてしまったら、恐ろしすぎて震えが止まらない。




そんな危険物質とは、早く引き離してしまった方が良い。






そもそも、付き合ってもない女の子の部屋に毎日ベランダから入り込むなんて、どーかしてる…。

まぁ、妖精と人間で付き合ってる人たちなんて聞いたことないけど。






さて、今日はどうやって追い返そうか…?








沢山案は持っているものの、今日は正攻法で追い出すことに決めた。






俺は、トウくんを姉さんの部屋の外の廊下へと呼び出す。






こんなにも彼を、俺は疑っているのに、彼は俺をめちゃくちゃ信じているらしい。
何回追い出されても、フツーに呼びかけに応じてくる……。







今日もそうだ。





「愛くーん、何ー?」






気が抜けるような、ゆるーい感じで彼は姉さんの部屋から廊下へと出てきた。






……チャンス。









「いやあぁぁぁあああ!」





彼の断末魔のような叫びが家に響き渡ったけど、慣れている姉さんは部屋から出てくることはなかった。













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