妖精と彼
「…ふぅ。」
両手をパンパンと打ち、汚れを払いながら俺は勝利のため息をついた。
今日は玄関からトウくんを追い出すことに成功した。
自室に戻ろうとすると、ドラマ鑑賞のお供であるチョコレートとお茶を取りにきた姉さんと廊下で鉢合わせた。
姉さんは俺を見ると、ニコッと笑った。
「愛!トウを追い出してくれたの?ありがとー!もー本当にうるさくって!」
姉さんが、何を思ったのか俺の頭を撫でようと手を伸ばした。
姉さんの方が15センチほど背が低いから、俺はかがんであげる。
姉さんは、嬉しそうに俺の頭を撫でた。
……ずっと。ずっと、撫で続ける。さすがに俺も、疑問をもった。
「…姉さん。もう良いんだけど。」
「えぇ?愛が嬉しそうにするから止めるタイミングを見失ったんだってー」
そう言う姉さんこそ、嬉しそうだ。
でも、俺も嬉しかったから、表情には出ていないけれど、姉さんは気付いてくれたんだろう。
俺は結構なシスコンだという自覚はあるけど……姉さんも大概だ。
俺に甘すぎる。
だけど……いつか、この甘さが俺に向けられなくなるのは…きっと耐えられない。