妖精と彼

さくら

そんなこんなのトウくんとのやり取りも、いつものごとく今日も終わり……姉さんと二人で夕飯を食べる。





食事はいつもダイニングで。
夕飯はいつも、母さんが作っておいてくれる。







今日の夕飯後はリビングでテレビを見ることにした。





テレビのリモコンに手を伸ばした時に、俺には目に入ったものがある。






「………」





リモコンの上に、えんじ色のジャージを着たちっちゃなおっさんがいる。
大きさでいうと、親指くらいの大きさだ。





この、「ちっちゃいおっさん」を見るのは初めてではない。
…いや、むしろほぼ毎日会っている。





このおっさんは、リモコンによじ登るのが趣味らしく、いつもテレビのリモコンによじ登っているシーンによく遭遇する。





…ちなみに、俺以外にはこのちっちゃいおっさんは見えない。
だから、よく姉さんや父さんにはリモコンから乱暴に振り落とされている。




毎回、振り落とされて結構遠くまで飛ばされているちっちゃいおっさんを見てると、日に日に可哀想に思えてきて俺はちっちゃいおっさんに乱暴できない…






ちなみに、ちっちゃいおっさん自体は俺だけがちっちゃいおっさんを見ることを知っている。



ちっちゃいおっさんは会話は出来ないからジェスチャーが主で、俺を見つけると両腕を大きく振って笑顔でアピールしてくる。





……その笑顔が本当に可愛らしいので、普段振り落とされているのが本当に可哀想に思えてならない。