妖精と彼
今も、ちっちゃいおっさんがリモコンの電源ボタンの上を冒険気分で歩いている。
……テレビが付けられない。
俺の存在に気付いてほしいけど、そう上手くはいかない。
リモコンをよじ登り終えたおっさんは、満足感でいっぱいなのか、俺のことに全く気付かないことの方が多い。
リモコンの上に指を乗せ、トントンとリモコンを叩く。
ちっちゃいおっさんのかなり近くで、俺の存在をアピールしてみるけど……
本当に気付かない。
何で、どうやったらそんなに気付かないのか、意味不明なほどに気付かれない。
だけど、悲しいことに俺はそんなことにも、もう慣れてしまっている。
だてにこのおっさんと何年もの付き合いをしてるわけじゃない。
リモコンの上で、指を動かし続けること5分……。
やっと…やっと、ちっちゃいおっさんは俺に気付いた。
すごく無邪気な笑顔で、俺に向かって大きく両腕を振っている。
「……いや、気付くの遅すぎでしょ。」
ちっちゃいおっさんは嬉しそうにリモコンのボタンを避けながら、走り回っている。
……割とシュールでウザい……。