妖精と彼
やっとちっちゃいおっさんと何とか意思疎通ができそうになった瞬間、背後から姉さんがやってきた。
多分、テレビの前に座っているのに俺がテレビを一向に付けないことに不思議に思ったんだろう。
「……?なんでテレビ付けないの?リモコンが動かないの?」
「あ、姉さ…違……!」
姉さんは、リモコンが故障しているのかと思ったらしく、バッと勢いよくリモコンを持ち上げた。
その瞬間、ちっちゃいおっさんの足はリモコンを離れた。
そして、ちっちゃいおっさんは宙を飛んだ……。
ちっちゃいおっさんは、割とよく経験しているハズのトラブルなのに、毎回初めて体験するかのような顔で振り落とされるのが、何とも言えない……。
「………。」
俺は、もう何とも言えない気持ちになる。
その間も、全く見えていない姉さんは気にせずリモコン操作をする。
電源ボタンを押すと、テレビは映像を映し始める。
「なーんだ、映るんじゃん!」
「………」
ホッとしたように喜ぶ姉さんと、反応に困る俺。