妖精と彼
「………姉さん、」
そこで姉さんを呼びかけると、姉さんは何かに気付いたのかハッとした顔をした。
そして、キョロキョロと辺りを見回している。
だけど、何かが見えるわけではなく…姉さんは首を傾げた。
「…もしかして……ちっちゃいおっさんがいたの…?」
「…………うん、まぁ。」
そう返事をすると、姉さんは申し訳なさそうにシュンとした。
「そう…ちっちゃいおっさんに悪いことしたね」
「…………」
俺は床に目を向けた。
カーペットの上を真剣な目でリモコンに向かい歩いている、ちっちゃいおっさんを見つけた。
さっきリモコンから遥か遠くまで振り落とされたという事実は、忘却の彼方らしい。
そして俺はちっちゃいおっさんから視線を、姉さんに戻した。
それよりも、姉さんのケアの方が大切だ。
「……ま、気にすることないよ。」
ちっちゃいおっさんは、ものすごくメンタルが強い。
姉さんや父さんにリモコンから振り落とされるくらいじゃ絶対にへこたれない。
ずっと見てきているから、ちゃんと分かっている。
最早ちっちゃいおっさんと俺は、会話はないものの、友達のような関係だった。
俺が持つ霊感は、俺に友達をもたらしてくれていた。