妖精と彼
それでも、他人には見えないものが自分には見えて、それを言葉にしても相手には伝わらない。
それは、怖いことだと俺は昔から思う。
小学校に入るくらいの頃は、幽霊やら何やらが見えることが本当に恐ろしかった。
『悪意を持っているもの』というのは生きている人間にしろ、違う存在にしろ、とても恐ろしい目をしている。
そして、自分の存在が認知できる人間を見つけると後ろをついてきてしまったり、取り込んで来ようとする。
そういうのも、本当に怖かった。
だけど俺の見た恐ろしいものは、どんなに言葉を重ねても、カラーのイラストにしても、俺にしか分からない。
父さんと母さんも、姉さんも、俺にだけ見える「存在」が理解できなくて、困らせてしまったことが何度もあった。
それが、昔は辛かった。
あまりに怖がる俺を心配して、もう亡くなってしまった俺の爺ちゃんが、見かねて色々調べてくれた。
爺ちゃんは、『何か』が見えても反応するな、と教えてくれた。
そうすれば、向こうも気づきにくい。
つまりは、『無視』とか『無表情』が良い…ということだった。