妖精と彼
俺は、もともと存在の周囲にある気配とか、オーラみたいなもので、相手の存在を特定できる。
大まかにザッと見ることで、遠巻きにでも「人間」か「その他の存在」かは認識できていた。
存在の認知はしてしまうものの、爺ちゃんのアドバイスのおかげで、無表情、無視(あまり視線をキョロキョロしないこと)で俺は「その他の存在」をうまくかわせるようになった。
そして、年を重ねることでだんだん「その他の存在」が見えることに慣れてきたのもあって、小学校高学年くらいの頃には恐怖はほとんどなくなっていた。
……時々、こいつはヤバイってやつを見た時はさすがに怖かったけど。
そうして、それに慣れた俺にはいつしか表情がなくなってきて、声と視線にしか感情が表れなくなった。
トウくんや姉さんの言葉を借りれば「ポーカーフェイス」。
それは、本当に良かったことだったのか…と考えてしまうことがある。
確かに、うまく自分の霊感との折り合いはつけられるようになった。
だけど…誰にも伝わらない霊感。
誰にも伝わらない表情。
きっと、俺と同じものを共有できる人なんていないんだろうと…俺は分かっている。