妖精と彼
元気に登場した姉さんを無言で見つめる俺に、姉さんは気にする様子はなかった。
お互いの学校帰りに、偶然会ったのが嬉しかったのかニコニコしていた。
「愛も今、帰りだったんだー………どうしたの?何かあった?」
でも、その表情は突然心配そうなものに変わった。
さっきまで霊感のことを考えてたからか、少し沈んだ顔をしていたのかもしれない。
「いや……何でも。」
姉さんは一瞬心配そうな顔をしたけど、安心したように笑った。
「そ?なんかホッとした顔してたから、ヤなことでもあったのかと思った!」
姉さんのその笑顔に、何だかモヤっとした気持ちが薄れていくような気持ちがした。
そこで俺は初めて、ストレスを感じていたことを自覚する。
姉さんは、俺の気持ちを察するのがとても上手い。
普段から霊的なものを見ることが多い俺は、無表情でいるように努めている。
見えないフリをするのが一番いいと、小さな頃に教えられてからはずっと。
昔はうまく出来ないことが多かったけど、徐々にうまくなっていった。
それでも無表情の俺を見て、家族は俺の考えを察してくれる。
一番理解できているのが姉さんで、声のトーンや視線で分かるらしい。
昔から、姉さんには敵わないと思ってきた。
姉さんのことを、俺は深く尊敬している。だから、この霊感を使って姉さんを危険から守れた時は嬉しかった。
……姉さん、めっちゃ霊の溜まり場にズンズン進んでいくんだもんなぁ…。
まぁ、そういう性格だしな。