妖精と彼
「……おはようございます。」
『これから、がっこうですか…?』
さくらを横目に、通り過ぎようとしたら話しかけられた。
仕方なく、彼女の前で立ち止まる。
「はい。…急いでるんで。」
そう答えると、彼女はまたニコリと笑った。
『…きをつけてくださいね。ゆうがた、またここでまっています』
「え……?は…?」
俺は聞き返したのに、彼女はフッと消えた。
何ごともなかったように、周囲の人は足早に通り過ぎていく。
制服姿で立ち止まっている俺を、不思議そうに見ている人もいる。
「………待ってる…か、」
昨日から、俺が急いでることばかりで、さくらとはあまり話さなかったけれど…。
俺を引き止めて、彼女は何か言いたいことがあるんだろうか…?
そんなことを考えていたけれど、学校に着いてしまえば授業が始まる。
…そんなことは、意識の外へ追いやられてしまった。