妖精と彼







時刻は夕方。
学校も終わり、早速俺は家路につく。





帰り道はそんなに急いで帰ることはしないけれど、今日は早足で桜並木を目指した。




一番大きな桜の木、さくらが今朝立っていた木の前まで着いた。





……が、さくらはいない。
夕方待ってるって、言ったのにな…。





通行の邪魔にならないよう、木のすぐ側に立つ。
周りを見渡しても、さくらはいない。




俺と同じで学校帰りや散歩などで歩いている人がちょこちょこいる程度だった。







大きな桜の木に、そっと触れる。
ザラザラした木の表面に、なんとなく…安心する。







「……さくら」





『は…はいっ!』





名前を呼んでみたら、ビュンッという音と共に、どこからともなく急にさくらが勢いよく現れた。








「…うわ、何……?」





呆然とする俺と、俺に驚かれて恥ずかしそうにするさくら。





『あ……おどろかせてごめんなさい。わたしのなまえ、おぼえてくれたんですね』






名前を呼ばれて嬉しかったらしい。
はにかむような笑顔が、とても可愛らしい。





そして俺の顔を見て、優しく微笑んだ。













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