妖精と彼
ドキッとした。
昨日の夜、姉さんと夕飯を食べに出かけた時のことをさくらは見ていたらしい。
あの時は確かに楽しかった。
彼女は俺の気持ちが分かると言ったけれど、もしかしたら感情が表に出るようになったのかもしれない。
それは、少しの期待だった。
俺は、念のため確認する。
「俺、そんな楽しそうな顔してました?」
『いいえ。いつもどおり、ひょうじょうはかわってなかったですけれど。』
これには驚いた。
やっぱりと言うべきか……俺の感情は、表には現れていないらしい。
それでも、さくらは俺の感情を言い当てた。
そうなると……彼女は確かに、俺の感情が読み取れるらしい。
体の内部に入り込み、ジワジワと侵食されるような……そんな違和感と居心地の悪さを感じた。
未知なるその感覚を、俺は「恐れ」だと思った。
それさえも気付いたのだろう。
さくらは、安心させるように俺に向かって微笑んだ。