妖精と彼
「………?なに、これ…」
始めての感覚だった。
今までに、こんなの感じたことがなかった。
『……どう、ありますか…?』
さくらが、手を離さないまま…不安そうに俺を見ている。
かなり近づいて俺を確認しているらしいけど、さくらの姿がハッキリ見えない…。
「…なんか……頭がクラクラするんだけど」
頭がクラクラ?フラフラ?してて、視界もいまいち定まらない。
気を失ってしまいそうだ。
俺がそう答えると、少しの沈黙のあとさくらは手をそっと離した。
『……めまい、でしょうか?』
「…………」
さくらが手を離してから、身体が少しずつ楽になった。
だけど、まだ返事が出来そうにない。
さくらが心配そうに俺を見ているのが、やっとハッキリと見えた。
『…だいじょうぶですか…?しんこきゅう、してください』
背中でもさすってくれそうな様子だったけど、さくらが俺に触れることはなかった。
言われた通り深呼吸をすると、少しずつ身体が回復してきた。
5回ほど深呼吸を繰り返したところで、俺は万全になった。
さくらは安心したように、ホッと息をついた。
俺はその顔を見て、なんだか安心した。
「……ごめん、もう大丈夫だから。」