妖精と彼
俺がそう答えると、さくらは微笑んだけど…明らかに落ち込んでいた。
『……ごめんなさい、あいさん。つらかったでしょう?』
「………そんなことないよ。大丈夫。」
割と深刻に落ち込んでいるようなのでフォローを入れると、俺の機嫌を伺うように見ている。
『ほんとにごめんなさい…。でも、これがいちばんつたわるとおもったんです……。』
さくらのその言葉に、話の本題を思い出す。
もしかして……これが、
「これが…妖精と人間が触れる危険……ってこと?」
さくらは大きく頷いた。
『……あいさんが、めまいをおこしたのはわたしとふれてから10びょうご。』
「……?」
秒数なんて数えてたのか…と妙な感心を覚えたけど、彼女が言いたいことはそこではなかった。
さくらは悲しそうな表情で、俺と触れた右手を、自分の左手で包んでいる。
『れいかんのないひとだったら、ふれたしゅんかんに……いしきをうしなって、たおれます。』
『そして………』
さくらは目を伏せた。
『ふれるじかんがながいと、さいあく………しにいたります。』