妖精と彼







今日も銭湯の清掃を終え、姉さんと二人で両親と入れ替わりになる形で家へと戻ってきた。






清掃が終わってからは、夕食まで少し時間がある。


この時間は自室で過ごしたり、リビングでテレビを見たりしたあと、姉さんと二人で夕食をとる。





ただ、俺には数年前から気になることがある。


それは、姉さんのこと。







姉さんの部屋の近くを通った時に、ほぼ毎日聞こえる声。







「悠ちゃーん!今日も可愛いねー!」


「あーもううるっさいな!ヤマさんの名推理が聞こえないんだけど!」







姉さんの部屋には、お隣さんの変な男のコが入り浸っている。
……3年前から。





そのお隣さんの名前は、トウくん。



トウくんは姉さんのことが好きで、お隣のベランダから家に入り込み、頻繁に押しかけてくる。

去年、姉さんが受験生だった時期を境に、押しかける回数は減ったものの、それでも頻繁だ。







彼は『温泉の妖精』…だと自身のことを言っている。
確かにオーラは人間ではない。








でも…俺は彼を疑っている。






彼の雰囲気やオーラは、決して『妖精』のものじゃない。


それに、彼は3年前に突然現れたのに、昔からお隣さんの子どもとして存在していたかのように扱われている。





それが事実ではないと知っているのは俺と姉さんだけ。
明らかにトウくんによる情報操作が行われている。






でも、人間の記憶やらをいじる情報操作は、とうてい『妖精』には出来る芸当ではないことを俺は知っている。












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