嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

「ほら寧々、さっさとバイバイして」

「しょーちゃん!バイバイ!」

もうさっさと帰ってほしいのか、エリカは寧々を呼んで、強制的に手を振らせている。

ここで別れずに済むのなら、どんなに幸せなことだろう。

東京と仙台から、今は壁一枚隔てた距離しかない。

それが一層、俺を二人から離れがたい気持ちにさせる。

「バイバイ寧々。寂しくなったらいつでも隣に来いよ」

「…隣…?」

「ああ。俺、昨日からこの部屋の隣に住んでんの」

呆気なくネタばらししたのは、もっとエリカに俺のことを意識してほしいから。

俺だけ悩むのも、なんとなく悔しい。

呆然と立ち尽くすエリカを置いて、俺は自分の部屋の中へと入っていく。

でもドアを閉めた途端、俺は腰が抜けてその場に座り込んでしまった。

「……だせーな……」

先程までエリカを抱きしめていた手の指先が、小刻みに震えている。

余裕ぶっていたけど、女に触れるのなんてもう二年ぶりだ。

それがましてや、ずっと会いたいと願っていた唯一無二の女。

「くそ…早く収まれよ」

さっきから、心臓がバカみたいにうるさく感じる。

…エリカだけじゃない。

俺だって、もう長いこと。…お前しか知らない。

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