嘘つきより愛を込めて~side Tachibana~

***

「準備できたか?」

「ちょっと…もう、勝手に入ってこないで!」

「だったら鍵開けとくなよ。無用心だな」

当たり前のように部屋の中に入ってきた俺のことを、エリカは遠慮なく嫌そうに見つめてくる。

そのいつもとは違う幼さの残る雰囲気に、俺はつい口元を緩めてしまった。

「…まだ準備終わってないんだから、こっち見ないで」

「別に、化粧しなくても対して変わらないだろ」

「それ、絶対嫌味だよね」

俺を一瞥してドレッサーに向かったエリカは、忙しなく肌に化粧品を塗りこんでいる。

本当にすっぴんの方が、化粧している顔よりずっといい。

あの顔で恥ずかしがって上目遣いで見つめられたら、そのまま押し倒したくなる。

こんな隙だらけの顔、…俺以外の男には絶対見せたくない。

「わー!しょうちゃんおはよっ!」

「おはよう、寧々」

俺を見るなり飛びついてきた寧々を、俺は軽々と高く持ち上げる。

「外寒くなってきたから、俺の車で保育園行こうな」

「うん!!」

エリカが熱を出して寝込んだ日以来、俺はこうして毎日寧々の送り迎えを買って出ている。

「あの…橘マネージャー。毎日送ってもらうのは、さすがに悪いんですけど…」

「そろそろインフルエンザが流行る時期だろ。こんな寒空の下、寧々を歩かせるつもりか?」

「……それは」

もう寧々のためにジュニアシートも購入してあるから、エリカも文句は言えないはずだ。

「いいから遠慮なく俺を使えよ。どうせ、ほとんどシフト一緒なんだから」

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